民主主義への憎悪 / ジャック・ランシエール
「自然には統治する理由のない人による統治される理由のない人の統治」
筆者によれば、これこそが民主主義というものらしい。
つまり、金持ちでも知識人でも世襲指導者でもない、「みんな」が発言権を持つこと。
最近の反グローバル化、既存の経済構造を打破しようとする流れ。
これを民主主義の行き過ぎだという知識人がいる。
しかし、民主主義とはそもそも特権を打破しようとするものだ。
現状の問題点はむしろ「統治する政治的・経済的権力」「消費者としての役割を任された民衆」という切り分けにある。
互いを理解しあうことと、「嫌な相手と表面上は手を組むこと」の使い分けが大事ではないか。
全然哲学を知らないので間違ってる可能性ありありだけど、こんな主旨だったと思う。
この本を読んだきっかけは、Brexitとトランプ旋風だった。
「どうしてそんな結論になるんだ?自分が何をしているのか分かっているのか?」から、
「そもそも民主主義ってなんだ?」と思ったこと。
そしてこの本を読んで。
「民衆は正しい選択をすることができる」「寡頭制こそが現状の問題である」という筆者の意見には、必ずしも同意しない。
しかし、現状を変えていく方向性の選択肢が必ずしも明確でないことは、大いに問題だと思う。
例えば資本課税(次のエントリーで言及するかも)による富の再配分。
例えば費用対効果による政策評価と、浮いた財源による教育への投資。
保護主義に走り、みんなで貧乏になろうとしなくても、みんなで幸せになる道はあると思う。
そのための選択肢を広く世間に示すことこそ、知識人に求められていることなのではないか。
グローバル化は止まる性質を持たないかもしれないが、全てを食らい尽くす怪物ではないと思うから。